【音楽で食べていく006】東京と福岡の2拠点でマニア垂涎のハイエンドギターを販売〜サポートするBottom’s Up Guitarsを経営する重浦宏太さん(後編)

Bottom's Up Guitars(ボトムズアップギターズ)」の代表・重浦宏太(しげうらこうた)さん。
「音楽で食べていく」第3弾はなんとチューヤオンラインと同じ楽器店さん!

音楽や楽器にまつわる職業を生業としている人にフォーカスする連載「音楽で食べていく」。3人目は、チューヤオンラインと同じ楽器店である「Bottom’s Up Guitars(ボトムズアップギターズ)」の代表・重浦宏太(しげうらこうた)さん。

ポール・リード・スミスのプライベートストックといえばボトムズアップギターズ!」と全国のマニアから支持を得ている同店ですが、後編では未来への展望や楽器業界で働くことについて語っていただきました。

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チューヤオンラインとも共通項が多いウェブ戦略。そして次の10年。

ポールリードスミスのギターを手にする重浦氏と中原

ーー2000年代初頭はネット回線のインフラも整っておらず、徐々にって感じでしたよね。プラグインギターズ(チューヤオンラインのリアル店舗)もホームページはありましたが、ECが普及してきたと同時にチューヤオンラインのサイトができた感じでした。


「当時は『SEO』なんて言葉は無かったですけど、見つけてもらわないことには話が始まらないと思って、手打ちでHTMLをいじっていました。『こう検索するだろう』と予測してウェブページの各タイトルを付け、製品解説を書いていました。

そうして、当社はEC機能を実装しないまま、この人数では手が足りないほど、世界中から問い合わせを受け、それに応対することで手一杯という日々が続いてきました。いい加減、自社ホームページを全面改装したいですね(笑)」。

ーー次の10年をどう動くか、などのプランはあるんですか? お互い体力的なことはあるにせよ、また別の土地でやりたいとか、新しいことにチャレンジしたいという気持ちも?

これからを語る重浦氏

「はい、私の望みとしてはまだこの仕事を20年、30年は続けていかなくてはなりませんから。ここ福岡市は都市開発も進んでいる土地で、このあたりのウォーターフロント計画の話もなくなってはいないんですよね。推移を見守っていかなくてはなりません。

実は20余年前から、ひとつやりたいことがあるんですが、車で楽器店に乗り付けて、スタジオで自分の機材で音も出せて、ライブ本番や配信もできちゃうような複合音楽ビル(※)を建ててみたいです。本番前に使える美容室、ライブが終わった後の打ち上げでも活用できる飲食店やBARまである、みたいな。美容室やアパレルの店舗を、と言ったのは今の若い人はステージ衣装っていう概念があまり無いのかもしれませんが、またそういう時代が巡って来るんじゃないかなって思います。

※各階にアパレルや、ヘアサロン、BAR、楽器店やライブハウスが入居するビル

要するに、ステージ、スタジオ、ヘアメイクや打ち上げ、楽器販売から修理対応まで全部できるビルをやりたいですね。そこでメディアもやりたいです。ライブの配信などもそうですが情報発信も担っていく」。

ーーそれをやるには福岡っていい場所ですよね。

「そうなんですよ。街の規模も人の集まり方も良いんですよね。あとは不動産の話にもなってきますが、社長業を通してそういう人たちと知り合うことですね。幸い美容系の専門学校とかはすぐそこに集中していたりしますので、可能性というか実現度合は高いのではないかと思っています」。

矛盾がある世界でどうやっていくか

Bottom's Up Guitarsに展示されているギターやベースたち

「社内メッセージでも言っているんですが、この仕事は矛盾しているんだと。高級店のような接客もしつつ、ワイワイ盛り上げろと。どうやって? とスタッフには矛盾が生じますよね。

毎日矛盾との戦いの中で、ポール・リード・スミスなんかは高級品だけど音も良いものが両立している。だから慌てず全部やれと。大変だと思いますよ。「この規模感」ですが、少ない人数で回しているので。

膨大な量のメールが届きますが、ポール・リード・スミスの修理についてのお問い合わせが大多数を占めています。85%はソレです。

店頭業務もありますので、どこで購入されたとかはお聞きしません。とにかく聞かれた内容にのみお答えする。だからスタッフはキツいですよ。

『この部品ありますか』とメールで聞かれ、それに答えつつ、並行して通販の発送や、商品写真撮影・編集、ライティング、SNS発信、デジマート等への商品登録もしなくちゃいけない」。

どんな人材がこの業界にマッチしているか

ーーどんな人にこの楽器業界で働いて欲しいな、とかありますか? プレイヤーもコレクターもすべての人が楽器を楽しめるような業界になったら良いな、という願いも込めてですが

重浦氏


「ツイ廃じゃないヤツですね(笑)。

※一同爆笑

勤務中こそこそスマホ触ってるヤツはダメです。まあそれは冗談として、烏滸がましいですが体育会系の職種でもあるので、基本的には体力がないと厳しいですよね。体力があってメンタルもある程度強くないと成り立たない。あと夢中な人ですね。好きが勝っている人。

親切だったり挨拶ができたりとか基本的なことはありますが、究極は『体力・メンタル・夢中』という感じですかね。この仕事はある程度続けないと見えてこない仕事だと思います。古臭いですけど石の上にも3年という覚悟でやってほしいですね」。

ーー好きが究極ですよね。

「音楽のサポートをする人として、3年くらいでやめないで欲しいなと。天職を見つけに来て欲しい。ただし、私たち(経営者)も、待遇とか福利厚生をキチンとしないといけない。

業界全体でいうと、お客様から『ああプロだな』って思わせるような人が良いですよね。〇〇のことは〇〇楽器さんの△△店の■■さんに聞けば良い、みたいな。

スペシャリストなのかゼネラリストが良いのかっていうのは難しい問題で、時代もありますし、上長がシッカリしていないといけないですよね。

ウチは新品販売店ですが、だからといって中古の取扱いができなくてもいいってわけじゃない。そのあたりの知識も網羅しておきたいですね。さらに情報発信などブログもちゃんと書けるスペシャリストでありながらゼネラリストも兼ねなきゃいけない。

常々いっているのは、そうした『何者かになりなさい』ということです。お店の特色でいえば『ポール・リード・スミスならウチだろう』とかですね。色々な質問を想定してすぐに返信できるように、日々準備していますね。

永遠に伸び代がある業界だと思いますし、楽しい業界だと思いますよ。音楽が無くなることはないと思いますので、楽器業界も無くならないはずです」。

楽器店は夢のある職業であり続ける

PRSのギタを手に語る重浦氏

ーー夢中であったからこそ、一代でここまでやってこられたのだと感服します。

「僕、公務員の息子ですからね。一代で自腹でやってきましたので100%お客様のおかげです。

楽器店って夢のある職種だと思うんですよね。音楽とは切り離せない楽器を扱う仕事ですが、演奏者のモチベーションを上げられるような楽器を提供できると充足感が凄いですよ。先ほども申しましたが、音楽があり続ける限り楽器もあり続けます。究極な話、アナログとかデジタルとかそういう次元ではないですよね。どっちも重要なんです。

また、ミュージシャンじゃない方でも楽器を購入することで仕事や生活にハリが出ます。人生のモチベーションという意味では大事なポジションだと思います。プレイヤーもコレクターも関係なく、楽器を愛する人たちに良いものを提供し続けていきたいと思います。

同じ楽器店さんのブログに登場できるということで、みんなで盛り上がっていければと思いますので、今後とも宜しくお願いいたします!」

ーー重浦さん、今回は本当にありがとうございました!

Bottom’s Up Guitars

まとめ

Bottom’s Up Guitars(ボトムズアップギターズ)の重浦宏太さんにご登場いただき、起業〜福岡店のオープン〜将来の目標、そして業界で働いていくための資質などについて、お話いただきました。

持ち前のバイタリティで、単身渡米、ポール・リード・スミスの工場まで出向き、関係を構築していくやる気は誰でも真似できるものではありません。こうした夢中になれることを持ち、かつ経営者としての感性も持ち合わせていなければなりません。

楽器業界がより良くお客様との関係を保ち続けていくための情熱を感じた取材でした。重浦さん、今回は本当にありがとうございました!

Bottom’s Up Guitars 公式サイト:
https://www.buguitars.com/

Bottom’s Up Guitars 東京店公式Twitter:
https://twitter.com/BuGtrs

Bottom’s Up Guitars 福岡サンパレス店公式Twitter:
https://twitter.com/BugFuku