
MAXON SP-01 SPECTRUM/D【エフェクター珍百景004】
ワウ半止めの歪みにフォーカスしたニッチな迷器

エフェクターのレビュワー・ライターとして活躍し、DISCOVERでも「ゆるゆる調査オンライン」などのブログでお馴染みの井戸沼尚也さん。ここは井戸沼さんが所有する個人的なエフェクターのコレクションの中から一風変わった面白いモデルを紹介するコーナーです!
第4回は「MAXON SP-01 SPECTRUM/D」を紹介します。
あの頃、確かにニーズがあったワウ半止め
こんにちは、井戸沼尚也です。
今回は日本の人気エフェクター・ブランド、MAXONの迷器を紹介します。
MAXONは1966年に設立された日伸音波製作所のブランドで、これまでにOD-9やSD-9など、歪みの名器を数多くリリースしてきました。
今回紹介する「SP-01 SPECTRUM/D(以下、SP-01)」は、ファンの間で“ゼロワン・シリーズ”と呼ばれる1985年頃から発売された大きな電子スイッチを持つシリーズの中の、ディストーション・ペダルです。
SP-01自体は、1980年代後半(1987年?)から1990年頃まで生産されたようなのですが、古いモデルで資料もほとんどなく確証が持てません。
当時の売りだった電子スイッチは、いま踏むと「踏み心地が良くない」、「オン/オフがはっきり切り替わらない時がある」等、なかなか微妙な使い心地です(苦笑)。


SP-01は基本的にはディストーションなのですが、最大の特徴は“SPECTRUM(スペクトラム)”コントロールでしょう。
ここを調整してワウワウ・ペダルを任意の位置で止めたような、鼻詰まり系の歪みサウンドを簡単に作り出すことができます。

海外の方が、ネットでSP-01について「これは、ジギー・スターダスト(デヴィッド・ボウイのアルバム)の、ミック・ロンソンのサウンドを再現したペダル」と書いているのをみたことがありますが、果たしてそうでしょうか?
80年代の日本ではマイケル・シェンカーが大人気だったこと、そして80年代後半にはB’zがデビューし、当時の松本孝弘さんがワウ半止めサウンドを駆使していたことなどの方が、影響が大きかったのではないかと思います(が、開発者インタビューなどが残っていないため、確証はありません……)。
どちらにしても、あの時代にワウ半止めの歪みにニーズがあったのは確かで、そういった音はよく聞きましたし、私も当時SP-01を新品で購入したことを覚えています。



神々と同じ、キメ細かいワウ半止めサウンドは出せるのか!?
SP-01のサウンドは「ワウ半止めといったらこうだよね?」と分かりやすく強調したような、クセの強さが特徴です。
また、本来なら重くて大きなワウ・ペダルと、歪みのエフェクターの両方がなければ出せないようなサウンドを、これ一台で出せる点も魅力といえるでしょう。
この記事を読んでいる皆さんは、「マイケル・シェンカーや松本孝弘さんのようなギター・ゴッドと同じようなキメの細かいワウ半止めサウンドは出せるのか」という点が気になるところだと思います。
あなたの耳にSP-01はどう響くのでしょうか? 実際に動画で音をチェックしてみてください!
いかがでしたか? “SPECTRUM”を任意に設定した時の半止めサウンドはもちろん、“SPECTRUM”を絞り切ったマイルドなトーンも、なかなか面白いですよね?
ギター・ゴッド達のサウンドに近いかといえば、「歪みがややファズ寄りで粗い」、「ミッドが出過ぎ」という感じで、ちょっと難しい気もしますが(そのあたりが製造期間の短さに表れているのかもしれません)、SP-01ならではの単音の太さ、ワイルドさは他にはない魅力です。
現在は全く人気がなく、中古市場でもあまり見かけない珍品ですが、80’sのハードロック
感を狙うならこれもアリかと思います! 見つけた時はぜひ試してみてください!
それでは、次回のエフェクター珍百景も、お楽しみに!