【音楽で食べていく001】メジャーデビューからスタジオ運営、そして車中泊レコーディングを極める末松孝久さん(前編)
今回よりスタートする新企画「音楽で食べていく」。ミュージシャンや楽器メーカー、スタジオなど「音楽」に関わる事を生業とする「プロフェッショナル」の方々をご紹介していくシリーズです。
第一線で活躍される音楽のプロフェッショナルがどのように仕事に携わっているのか、やこれからプロを目指していく方にも参考となるシリーズになれば幸いです。
記念すべき第1回は、chuya-onlineの同郷、北九州市から上京しメジャーデビュー、そして福岡で音楽スタジオを経営し、今では作曲やプロデュース業でご活躍されている末松孝久(すえまつたかひさ)さんにご登場いただきます。バンドのドラマーとしメジャーデビューしましたが、プロデュース業に至った経緯なども聞いてきました。なにより驚いたのが現在の作曲(生活)スタイルです。
どんなお話が伺えるのでしょうか?
末松さんの経歴&現在の車中泊スタイル
まず末松さんの経歴から。
小学校教諭(!)を経て、1990年に「Z-BACK」でメジャーデビュー。1996年にバンド解散後、いくつかの職を経て、地元北九州にレコーディングスタジオ「MEDIAPLANET」を開業。自身の音楽活動とアーティストのプロデュースやレコーディング、企業のCM曲なども担当するマルチぶり。
現在では、よさこい祭りに出場するチームの作曲や海外アーティストからの楽曲制作のオーダーに応える日々です。そして数年前より、ミニバンで車中泊するキャンパースタイル生活をスタートさせ、車内にレコーディングできる移動スタジオを作り上げました。
生活と音楽制作を車中で完結している様子と、自身の音楽生活について語っていただきました。
プロデビューから北九州に戻り起業
ーーバンドが解散して、九州に戻ってきたときはどんな生活だったんですか?
「福岡のテレビ局系の制作会社に入って、そこで繋がった人たちとスタジオを作ろうと『MEDIAPLANET』を立ち上げたんですよね。でも、地元の人からすると”故郷を捨てて東京に出ていったヤツ”的な雰囲気はありました。故郷ではあるけど、結果を出していかなきゃいけないという気持ちになりましたね」。
ーーバンドではドラマーでしたが、スタジオでのレコーディングや編曲はすぐできたんですか?
「もともと楽器との出会いはエレクトーンなんです。地元でバンドを結成する流れでドラマーになったという感じですね。ドラムを始めたのは高校1年生で、それまではエレクトーンという感じ。メジャーデビューして東京の現場を見ることができたのは、自分の中でかなりの経験ですね。5年間のレコーディングなどスタジオワークでプロの現場を知ることができたことが、自分のスタジオワークやお弟子さんに伝えることにも活きています」。
東京での運命の日
ーー自分の中でバンドだけじゃなくてドラマーとしてスタジオミュージシャン的なことは考えたんですか?
「最初は、そういう風になりたいとも思っていました。でも強烈に『あ、ドラムは諦めて編曲などのスタジオ仕事をしよう』と思い知らされた出来事があったんです。
Z-BACKのレコーディングで渋谷のスタジオを訪れたとき、他のスタジオがCHAGE and ASKAさんのリズム録りの日だったんです。たまたまプロデューサーさんが自分たちと掛け持ちされていて、そのときのドラマーが山木秀夫さん。『見せてもらってもいいですか?』と頼み込んで、セッティング、ウォーミングアップ、録り、とすべてを間近で見ることができました。
ウォーミングアップで叩き始めた時、顎がはずれるかと思うくらいの衝撃を受けました。『これがプロなんだ』と。日本のトップドラマーの凄さを思い知りました。
また違う日に別のスタジオにいくと、また有名アーティストのリズム録りの現場がありました。だけどドラムはセッティングされていない。卓に1人、MacのSE30に向かってパチパチとステップ入力で打ち込んでいる人がいて。『はい、できました』とモニタースピーカーから再生されたドラムの音が、ものすごいわけです。デジタルでここまで凄いのかと。
そんな生身の人間の凄さと、デジタルの凄さの両方を東京で体験できたんです。山木さんのようには無理だけど、Macでならできることがある、とも思いました」。
Macとの出会い。DTMのはじまり。
「ある日、スタジオのアシスタントのお姉さんが『Mac買い換えるから古いの買わない?』って言われて『買います買います!』って渋谷のアコムに駆け込みました(笑)。アプリケーションも入ったものが25万円くらいで買えて。Macを抱えて山手線にのって帰宅しましたねえ。そこから末松のDTMがはじまったといえます。
東京ではそういう人との出会いとか、印象的な出来事がたくさんあって今に導かれている気がします。
東京って、会うべき人に会える土地だと思います。福岡に戻って会社勤めもしましたが、こういうプロの現場を知っているからこそ、自分でスタジオをやろうという気にもなりましたし」。
後編予告
末松さんの東京時代から今につながるお話はここまで。素敵な出会いや、その後の人生を決定づけるような出来事にも遭遇されたというお話をしていただきました。
後編では、現在の活動や車の中に作り上げたスタジオについてご紹介しますね。
乞うご期待!
末松孝久さんのよさこい動画
音楽P末松 YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/user/jamaiky/videos
PLANET STUDIO(プラネットスタジオ)オフィシャルページ
http://www.mediaplanet.co.jp/
末松孝久さん Facebook
https://www.facebook.com/takahisa.suematsu
後編につづく
(編集&撮影 赤坂太一)