【音楽で食べていく002】メジャーデビューからスタジオ運営、そして車中泊レコーディングを極める末松孝久さん(後編)
前回は、末松さんの東京でのメジャーデビューから九州に戻られたお話をしていただきました。プロの洗礼を受け、それが今の活躍の元になっていることが、とても響くお話でした。後編では、現在の活動から生活スタイルなどについてお聞きしました。また業界で活躍するためのヒントもいただきましたのでタメになる言葉がたくさん聞けると思います!
前編をまだご覧になっていない方はこちら
車両・機材紹介
末松さんの車とその中身についてご紹介していきます。
車両は日産セレナ(C25型)。室内にはベッドキットなどを自作し、ソーラーパネルや蓄電システムなどのパーツを調達して、冷凍庫まで稼働させている。近々ハイエースに買い替えてさらなるサイズアップを計画中とのこと。それによって81鍵のキーボードが横に配置できるようになることから自由度もアップするはず。
オートキャンプ場に行けばそのまま車中泊することができ、自然に囲まれながら音楽制作に集中することができる状態になっています。もちろん好きな時に好きな場所へ行けるということでインスピレーションを得やすい。
そして車両後部に設置されたスタジオ! MacBook Pro15インチを軸に、オーディオインターフェイス、MIDIキーボード、モニタースピーカー、追加モニター、ヘッドフォンというシンプルな構成。プロの現場でラックのハードウェアなども経験した末松さんがたどり着いた答えがここにあります。
「音楽制作というとMacのパワーも必要でデスクトップが当たり前、プリアンプやコンプなどもラックのものが必要でしたが、ソフトウェアの進化、そしてMacBook ProのCPUも8コアになって、ちゃんとストレスなく動いてくれるようになりました。そこがかなりシステムをシンプルにできるようになったきっかけとして大きいですね」。
この通り音楽制作に必要十分な最低限の構成になっています。しかし各アイテムとも評判の良いモデルをチョイスしているところもさすがですね。
思い出の機材 〜開業のタイミングで登場した「VS-880」
ーーレコーディングというかエンジニア的なお仕事になられたわけですが、当時の機材的な思い出ってあります?
「当時はヤマハのモニターアーティストだったんですが、バンドも解散してこちら(福岡)に帰ってきたところでローランドの方が「VS-880」を持ってきてくれたんですね。もしよかったら試してみて下さいって。
お声がけもとても嬉しかったですし、じっさい使ってみて『これで音質劣化に悩まされずレコーディングができる!』と興奮しました。バーチャルトラックもあって簡単にベストテイクが作れたり。
当時のプロのレコーディング現場では、まだソニーの3348とか現役でしたしね。ドラムのタムとか後でまとめたりする必要も出てきたり、ピンポン(録音)はしていましたし。
これはMacと同期させることもできたし、本当に画期的な機材で、しかも独立時の自分を助けてくれた存在として印象深いですね。厳密にいえばAD/DA変換の弱さというか音の細さはあるけど、とにかくあの小さい筐体であの機能が使えたということが革新的でした」。
よさこいとの出会い
ーー現在はどういうお仕事が多いんですか?
「コロナで止まってしまっているけど、近年は高知から始まった『よさこい祭り』のトラックを作るお仕事が多いですね。
すでに15年ほどやっているんですけど、ご依頼いただくチームも少しずつ増えていって、今では全国で20チーム程です。むかし北九州でもよさこいをやろうってプランが立ち上がって、そこからお話が来たことがきっかけですね。
自分としては、従来の楽曲からオリジナリティを入れ込んだりしたので、古い人たちからは反感を買っていたみたいです(笑)。ただ実際に踊る人たちからは好評で「ウチもお願いしたい」と楽曲制作に至るというケースが増えていったんですね。そんなこんなで15年という感じです。ライフワークになってますね。
自分も祭りの開催期間は現地に滞在するんですけど、ドラマ感が凄いわけですよ。泣き笑い悲喜こもごも全部ある。そういうのに魅了されますよね。今では自分が作曲している全チームすべてを見に行けないほどになってしまいました」。
ーーよさこいがけっこう大きく占めているんですね。でも今は中止の流れと。また新しい動きはあるんですか?
「これから新人アーティストのプロデュースをすることが決まっています。5組くらいですかね」。
車中泊スタイルになった理由
ーーこのスタイルに至ったのはなぜですか?
「例えば、街中で曲のインスピレーションが湧いたとして、それを作りたいとスタジオに行くと消えてしまう。すごくもったいないですよね。お風呂に入っている時だったり街を歩いているときだったり、そういうアイデアはすぐに記録しておきたいとずっと思っていました。
あと単調な生活だとアイデアも湧きにくい。東京でたくさんの曲を作り出している人は凄いなと思います。自分には無理でした。でもこういうクルマで動き回れる、そしてすぐに記録ができる状況になれば、アイデアも無駄にしないと思ってこのスタイルになりました。
こういう大自然の中で、物凄い星空を眺めながらビールを飲んでいたりすると『オッきたきた!』って、すぐに録音できるんですよ。無駄が無いです。
自分は自然が好きなので、靴下を脱いで川にはいってアースを落とす感じが好きなんです」。
プロとして大事なこと
ーー若い人に伝えたいことってありますか?
「今の方は、頭も良くてスマートなんですが、依頼され続けるような『何か』が足りないと思います。自分は150%で仕事しないと次がないと思いながらやってきました。効率を求めすぎると相手にとっては物足りなく感じられることもあるんじゃないかと。
お弟子さんからはお金もとらず、自分のノウハウを伝えていますが、できれば東京のプロの現場になんとか入り込んで、できるだけ多くのことを吸収してきなさいと言っています。やはり最先端の現場でしか得られない経験があって、それが必ず自分の糧になりますから。
それができてはじめて地方でもできるんじゃないかなと思っています」。
ーー末松さん、ありがとうございました!!
末松孝久さんのよさこい動画
音楽P末松 YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/user/jamaiky/videos
PLANET STUDIO(プラネットスタジオ)オフィシャルページ
http://www.mediaplanet.co.jp/
末松孝久さん Facebook
https://www.facebook.com/takahisa.suematsu
(編集&撮影 赤坂太一)