【音楽で食べていく009】ベーシストと社長を兼務し自分たちの納得できるスタイルを実現させている四星球・U太さん(後編)
2022年で結成20周年を迎える「四星球」。ベーシストであり所属事務所の社長も兼務というU太さん。前編では自分たちが思い描くバンド活動のための秘訣などを伺いました。後編ではコロナ禍となり気付いたことや、気持ちの切替えなどについてお話いただきました。
前編をまだご覧になっていない方はこちら↓
自由がゆえの焦り。社長業そしてプレイヤーとのバランスについて
──── (前編の続きから)焦りですか?
自由さもある分、曲作ってリリースしてという展開が早くて。
バンドマン目線ではなくてレーベル目線的なことでいうと、当時はプロモーションの仕方とか本当に手探りでした。
流通に関しては「LD&K」さんに力になってもらって、またそこでも色んな会社さんを紹介してもらえたりもしました。タワーレコードにCDのプレゼンしてくれたりとかですね。
今は2017年にメジャーデビューさせていただいたビクターさんがそこをやっていただいてますね。
──── ビクターから音源を出されましたが、所属は変わっていないんですね。
はい、事務所ごと移っていたらこのペースでライブもできなかったんじゃないかと思うんですよ。
──── なるほど。今はレーベルの社長としてメンバーに”お給料”を払っている、ということですか?
そうですね。
コロナ禍になる前は、年間で120本くらいライブをやっていますし、全員「自分たち働いているなー」という実感もあると思うんですよ。康雄はネタも考えて曲も作っていますし、まさやん(Gt)はセットなどの小道具も作っていますから。
雇用保険にも入って、固定給ですが少しずつ金額も上げていって。固定給が少なく申し訳ない気持ちがあるのと、いつ大きな出費があるか分からないお仕事なので、一年間頑張った分のボーナスを年末に少しでも出せるように、ここ数年はやりくりさせてもらってます。
──── 社長とプレイヤー、切り替えはどのようにしていますか?
自分は意図的に分けようとしています。こういう(ツアーの多いコミックバンド)スタイルだからこそだと思うんですが、経営のことばっかり考えていたら動けない。
また衣装を買うのか? とか、セットに使うダンボールはどうする? とか。そういうことを言い出すとモチベーションが下がりますからね。
基本的にはバンドが伸び伸びとできるように、というのは昔から一貫させて考えようとしてます。もちろんイライラするときもありますよ(笑)。
──── バンドって曲作りとライブ以外にも色々ありますよね。
今でこそグッズなどはデザイナーさんにお願いするようになり、物販チームに任せられるようになりましたが、昔は時間もお金も無くて、自分でデザインしていましたね。今見返すと、何も分かってないヤツが作ったことがわかります(笑)
準備をいつから前倒ししないといけないとかの感覚も最初はわからなくて、思いついたときは全然間に合わないから、徐々にペースを掴んでいきましたね。
「誰かがやらないといけない」「バンドを続けていくため」「応援してくれるお客さんや関係者に不義理はできない」、この3つだけでやってきたと思います。
──── 「officeみっちゃん」という社名をつけられた理由って?
それが特に無くて(笑)。
「”みっちゃん”って何ですか?」と聞かれたいがためにつけました(笑)。最初は「みっちゃん」だけで、届け出するときに会社っぽくないなと思い、「オフィス北野(ビートたけしの元所属事務所で現在は改称)」が好きだったことからアタマに”オフィス”をつけたと。四星球と香川県の古墳シスターズが所属していますね。
古墳シスターズさんは、ライブで揺すぶられるものがあってCDを出したいと言っているという噂を聞きつけまして、よければウチでやりませんか? と声をかけました。
全部自分たちでやるのは大変なので、自分たちのレーベルを使ってもらえれば少しはラクになるかもしれない。自分たちも昔そうでしたし。ずっと所属してもらわなくても、色々経験してわかってきたら独立してくれても全然良いと思ってます。
バンドメンバーとの関係性
──── 社長とバンドメンバーの関係はどうですか?
やはりポジション的に「言う」立場なので、うっとうしいと思われているかもしれませんね(笑)。だけど自分のしていることを理解してほしいとも思っていないです。共通認識としてバンドをやっていくことをちゃんと思っていてくれれば。
──── セット・小道具って、いつも持ち歩いているんですか?
運ぶ車両が大変なことになってますね。
壊れないように緩衝材を挟んだりして。事務所の倉庫もいっぱいです。まさやん1人で作ってます。
昔は全員で作っていたんですが、まさやん1人で作るようになりました。小道具制作部という部署みたいになっています。
今では他のバンドからの発注がくるようになって。それもダンボールで作っています。それを分解して発送して。
──── 社長業とは別に、自分のベースプレイを追求する時間はあるのですか?
おそらく他のバンドよりもスタジオ練習などでメンバーと会う時間が多いと思います。ずっと現場にいる感覚なので、そこが自分の時間になっているかもしれませんね。
コロナウイルスが四星球に与えた影響
──── コロナウイルスの影響はかなりあったんじゃないですか?
ライブ本数は減ってはいたけど、他のバンドに比べればやれていた方じゃないかな。
ちゃんとソーシャルディスタンスがとれる会場さんでやらせてもらえたりもしましたしね。行きづらい状況でもこちらが安全ですよ、と言ってあげることで来やすいマインドになってくれたお客さんが来てくれたと思います。
とはいえ、それぞれ色々な事情がありますので、ライブハウスが好きな方が皆ライブハウスに帰ってこれるようになるまでは動き続けないとなと。
自分たちは、遠方へも車移動ですので気楽な部分もありますが、お客さんの方が大変ですよね。こういうバンドなんで僕らがやらないとっていうのもありましたし。
キレイにだいたい赤字なんですが(笑)、逆に活動にどれくらい経費がかかっているかを細かく認識することができて、経営者的には良かったと思います。
遠方へのツアーの移動経費をキチンと把握するようになったんですよ。「毎回こんなにかかっているのか」と。
2022年で20周年
──── 今後のヴィジョンを教えて下さい。
来年の20周年は大きい動きと細かいこともやっていきます。
これまでも「来年はどうしようか」という積み重ねでした。
お世話になっている方へのお返しと、新しいことへの挑戦をする年にしたいですね。
──── ありがとうございました!! 引き続き応援して参ります!!
(編集&撮影 赤坂太一)