【メーカーに訊く】アリアプロが贈るカスタムショップブランド「AP2」とは?
「AP2」というメーカーを聞いたことはありますか? 今回は歴史ある国産ギターメーカーとして知られるアリアプロが展開するカスタムショップブランドとして2018年にスタートした「AP2」についてお話を伺う機会を得ました。伝統的なモデルを現代的にアレンジしたギター・ベースを紹介していただきつつ、今後の展開についても語っていただきました。
荒井貿易公式webサイト:http://www.ariaguitars.com/jp/
APⅡ公式サイト:http://ariacustomshop.jp/
AP2がスタートした経緯
──── AP2がスタートした経緯を教えて下さい。
KATOさん:
「アリアプロ2」は、80年代を知るギターファンの方にはハイエンドギターのイメージがあると思いますが、それよりも若い世代になるとリーズナブルな価格帯のギター・ベースを展開しているメーカーとしての認知されていると思います。
自分も入社前は、SB(スーパーベース)やPE(プロエレクトリック)があると知りませんでした。2018年に社内で現代的で高品質なラインを作ろうと「AP2」が始まりました。いわゆるカスタムショップ的な位置づけですね。
ちなみに「アリアプロ2」というブランド名は、1966年ごろにはじまった「Aria Diamond」というブランドから、1975年ごろによりプロ志向のエレキギターを、と「アリアプロ」に。さらに先進的なギターを作るための思いを込めて「アリアプロ2(ツー)」となりました。
整理すると「プロ2」がエレキギターを示すブランドシリーズ名という感じになりますね。「アリア」はクラシックギターを取り扱うブランドでしたので。ちなみに「AP」というシリーズも存在していました。
AP2のモデル展開
──── AP2のコンセプトやモデル展開はどうなっていますか?
AP2のシリーズコンセプトとしては、尖りすぎない使いやすさを意識しています。どんな現場でも使えることが重要という。即戦力となるクオリティを持ちつつ各モデルに特徴を持たせています。「購入後すぐにライブに投入できる」というテーマで展開しています。
MAF
まずST系といえる「MAF」シリーズですが、フラットトップに22フレット仕様がベースになっています。アリアプロでいうマグナシリーズを発展・進化させたモデルですね。
ネックのフィット感をかなり意識していますので、抱えた瞬間に弾きやすさを感じていただけると思います。
”職人さんの道具”という感じですね。ピックアップのパターンも選べますが、材の違いで選んでいただけるギターかなと思います。
PE
「PE」はアリアプロの伝統そのものなのですが、もともと完成度が高くAP2だから特別に変えた、というよりは現代風に重量コントロールをしたり、ボディバック形状をフラットにしました。今回お見せしているPEは指板にハカランダを採用した特別なモデルです。ボディトップのカーリーメイプルの杢目もカラーとマッチしていると思います。(※チューヤオンラインに入荷しました!)
アリアプロのギターは重いイメージがある方も多いと思います。個体差もあると思いますが、AP2としては軽さだけでなく、ストラップで下げたときに感覚的に感じる軽さも意識しています。80年代のPEを知っていただいている方に手にとっていただけると、より軽さを感じていただけるのではと思います。
──── ベースはどんな感じでしょう?
RSB
RSBシリーズはアリアプロにも存在していますが、より踏み込んだ弾きやすさを重視して開発されています。
いわゆるJJピックアップ配列ですがEQをフルブーストしても音像がボヤけない使いやすさも実現しています。普段ジャズベースを使っていて「フロントピックアップのみのサウンドが好きで……」、「24フレットあると良いのだけど」という人にもしっかり使っていただける仕上がりです。
ボディシェイプも24フレット仕様ということで小ぶりですが、組み合わせるネックとのバランスでヘッド落ちもしません。ペグも軽量タイプのものを使っていますしね。さらにカスタムショップ製のピックアップがいい仕事をしていますね。
このモデルもとても軽いです。抱えた時にスッと弾ける。実は24フレット仕様の4弦ベースって少ないんですよね。
いわゆるアッシュ&メイプル仕様で、スラップなどの派手なサウンドを出したいプレイヤーにおすすめです。アルダー&パーフェロー指板のバージョンもあります。(※こちらもチューヤオンラインに入荷しました!)
AVB
次に「AVB」シリーズですが、5弦で19mmピッチ仕様と、4弦からの持ち替えにも違和感の少ないモデルになっています。
5弦ですと、弦間ピッチが狭いものが多くなる傾向にありますが、ベースを弾いていて重要なのは右手のピッキングの感触だと思うんです。4弦と変わらない感覚で弾けるようにブリッジもネックや指板の幅も決めています。今回見ていただく個体はトップにバールメイプルを貼ったスペシャルな仕様になっています。重量も約4kgとかなり軽く納めています。ネックシェイプも薄く弾きやすさと強度を両立させていていますので、トータルで弾きやすいベースに仕上がっています。
プリアンプはRSB同様、カスタムショップ製のオリジナルのものを開発して、あくまでナチュラルに、足元のエフェクターボードでの音作りもしやすい仕様となっています。極端にブーストしないような仕上がりになっていますね。多くの方がアウトボードで音作りされる方が多いと思いますし。
ピックアップにノードストランドを採用しているのは、5弦の音程感を重視しての採用ですね。あとマスタートーンも効くようにしています。(※こちらもチューヤオンラインに入荷しました!)
数値には現れない魅力がAP2のキモ
──── 開発者のこだわりポイントや苦労されたことってどんなところですか?
鈴木さん:
シリーズを通じて、やはりネックのシェイプですかね。これはスペックシートでは伝わらないんですが。ぜひ弾いてみていただきたいです。「これです!」って言えるポイントがあるというよりも、工場の職人さんと、ああでもないこうでもないとやってきた結果がAP2に詰まっています。
持ってみてシックリくる感じは、抱えてみてはじめてわかりますよね。スペックシートの数値などを先に注目してしまいがちですが、持ってみて「オッ」と感じていただけるようなギターに仕上げてもらっています。
逆に、アウトラインが伝統的なモデルなのでルックスに目新しさは少ないかもしれませんね。ただプレイに直結する弾きやすさ、サウンド、重量、抱え心地には自信を持っています。例えばPEは伝統的なシェイプですけど、MAFは現代的にブラッシュアップされて「これまでのウチっぽくないね」って声もありました(笑)。それはとても良いことですけどね。
とにかく日本のメーカーとして日本人のDNAにフィットする心地良さを感じていただけると思います。すでに海外のディーラーからも引き合いがあって、けっこうな本数を輸出しています。
──── AP2用に使用する木材は特別なものなのですか?
スペシャルなものというよりも、ストックしてある中で重量やバランスが基準内に納まるように作ってもらっていますね。トップ材に関しても、見た目とコストのバランスの良いところで選んでいます。ただ良質な材が少なくなっていく中「これは!」というものもストックしていますので、工場の職人さんと常に相談して、リミテッドモデルを作っていく感じですね。
トップ材に使うキルテッド系もかなり値上がりしていますので、値段の上がらないギリギリの材選びやストックをして、ギターの価格も上がりすぎないように気をつけています。
──── 今回見せていただいたモデル以外にも展開予定のものがあったりしますか?
新シェイプではなく、PEとMAFの基準となるモデルをリリースする予定です。これまではAP2用の基準でカスタムショップ的なモデルという展開でしたが、よりブランドを体現するものになると思います。また全国の販売店さんと、セミオーダー的なことにも対応していきたいと思っています。
──── 自分好みのAP2ができるとなると欲しい人も増えるでしょうね!
KATOさん:
ボディやパーツのカラー、ピックアップなど手配できるものであれば作れると思います。実はそういう要望が多かったんですけど、せっかくこうしたカスタムショップ的な展開をはじめましたので。
鈴木さん:
あと荒井貿易はギター専売メーカーではなく、多くの商品を取り扱っているので、どう注力してバランスをとっていくかというところです。アリアプロ2もレジェンドも扱っていますので。
──── 今後の展開を楽しみにしています! またチューヤオンラインでも体験できるようにしたいと思います。今回はありがとうございました!
【番外編】知ってる? アリアプロ
今回、荒井貿易さんの本社におじゃましての取材でしたが、本社屋には世界的に貴重なギターが所蔵されているショールームや社食としても利用されるカフェが併設されていました。
カフェは近所の住民の方の憩いのスペースとしても利用されているとのこと。取材班も美味しいランチをいただきました。
ショールーム
カフェ・デ・アリア
カフェは通常営業中、ショールームも現在は見学可能となっていますが、状況を見ての営業となっていますので、行ってみたい方は事前に確認してみてくださいね。