Guyatone PS-106 Dual Octave 【エフェクター珍百景001】
美しき誤作動の世界
エフェクターのレビュワー、ライターとして活躍し、DISCOVERでも「ゆるゆる調査オンライン」などの連載でお馴染みの井戸沼尚也さん。ここは井戸沼さんが所有する個人的なエフェクターのコレクションの中から“一風変わった面白いモデル”を紹介するコーナーです!
記念すべき第1回は、日本製のGuyatone(グヤトーン) 「PS-106 DUAL Octave」を紹介します。
※商品名の表記方法は諸説アリで「Dual BOX Octave」、「Dual Octave BOX」などと呼ぶ場合もありますが本稿と動画では「DUAL Octave」と表記します。
昭和の楽器店で幅を利かせていたグヤトーン
こんにちは、井戸沼尚也です。
ヴィンテージが並ぶ昔の楽器店にタイムスリップしてみたい ──楽器好きなら誰もが一度は抱く妄想、願望ですよね。私はギター歴がそれなりに長いので、小学生の頃に実際の“1970年代後半の楽器店”に行ったことがあります。
当時は現在ほどエフェクター・ブランドが林立していたわけではなく、また今のBOSSのような絶対的王者がその地位を確立していたわけでもなかったので、エフェクターの棚自体は小さいながらもいろいろな製品が並んでいました。そんな中で、割と幅を利かせていたのがグヤトーンのエフェクターです。
グヤトーン自体は2013年に業務を終了していますが(現在は米国DeMont社が名義を取得しブランドは復活)、元々はテスコと並ぶニッポンのエレキギターの雄として1960年代にバカ売れした老舗メーカーですから、楽器店や楽器卸とのパイプが太かったのでしょう。70年代当時、店頭ではグヤトーンのエフェクターをよく見かけました。
若いプレイヤーにとってはあまり馴染みのないブランドだと思いますが、面白いものをいろいろと出していたんですよ!
珍品! アナログ・オクターバーの“迷機”
今回紹介するエフェクターは、グヤトーンの「PS-106 DUAL Octave」、アナログのオクターバーです。これはマニアの間では“迷機”として知られている、とんでもない珍エフェクターです。
外観から見ていきましょう。筐体は、いわゆるMXRサイズをわずかに大きくしたような独自のサイズ。これでも、時代的には小型の部類になります。色は褪せたような薄めの紫で、正直なところ購買意欲をそそられる色ではありません(笑)。
LEDは近年のエフェクターに比べるとびっくりするほど暗く、点灯すると寂しい気持ちになります。エフェクトONによって点灯するのではなく、アウトプットにジャックを入れると勝手に点灯します。おそらく電池の残量の確認用だと思われます。
このPS-106を含むBOXシリーズは生産時期によってアダプターが使える後期型、電池のみの前期型の2タイプあるようで、ここで紹介する個体は前期型です。
コントロールに関しては前期・後期とも同じで、NORMALノブ、OCTAVEノブ、それと1オクターブ下を加えるか、2オクターブ下を加えるかを選択するミニ・スイッチが一つと、とてもシンプルな仕様になっています。
これにしか出せない、暴れまくる誤作動サウンド!
このモデルを迷機たらしめているもの、それはズバリ音です。入力された原音からオクターブ下の音を生成する際に誤作動を起こし、迷いに迷った挙句に異なるピッチの音を出してくる、とんでもないエフェクターです。その結果、演奏者自身も意図しない、不思議なフレーズとサウンドが生まれます。
ではここで実際のサウンドを動画でチェックしてみましょう。
いかがでしたか? 信じられないほど太く、壊れたシンセみたいな音ですね。和音には対応できないので、壁のような音がゴーッと鳴るだけです(笑)。これを使えないエフェクターとみるか、演奏者の発想を超えた面白いエフェクターとみるかはあなた次第。
私にとってはオクターバーの中で最高に好きな逸品、いや珍品です。近年では中古市場に出回る数も少なくなり、なかなか試奏する機会がないかと思いますが、もし見かけたらぜひ手にとって弾いてみてください。現代のエフェクターでは味わえない、面白い音がしますよ。
それでは次回のエフェクター珍百景もお楽しみに〜!
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