いまさら聞けないPA レコーディング入門 ミキサー編 そもそもPAって何? 宅録から小規模イベントまで
PA レコーディング入門 ミキサー編
PA機器といえばライブやコンサートで使うような大型のスピーカーやミキサーを真っ先にイメージされると思いますが、プライベート環境でもレコーディングや楽曲制作が一般的に行われるようになった昨今、機材の選択肢も非常に多岐に渡ります。
このシリーズでは各機材ごとにシチュエーションに合わせた機材選択のポイントを整理していきたいと思います。
マイク編「いまさら聞けないPA レコーディング入門 マイク編 そろそろマイクを買おうぜ!? ダイナミック?コンデンサー?」はこちら
そもそもPAって何?(いきなり脱線)
突然ですがクイズです!(笑)
そもそもPAってなんの略?
Professional Audio、つまり業務用音響機器の略!と回答する方もいらっしゃるかと思います。もちろんこれも間違いではありません。
ただ、本来の由来はPublic address(公衆伝達)という言葉の略称だと言われています。第二次世界大戦前に当時の政治的指導者(団体)がプロパガンダの手法の一つとして大きな音に拡声し、多くの人に演説を聞かせる事を重視したことが音響機器の技術発展のきっかけになったとか…
いきなりの脱線失礼いたしました。
シリーズ1回目の今回は音源をまとめて、出力する、音響機器のど真ん中、ミキサーについて紹介していきます。
ミキサー選択のポイント 必要ch数を確認(宅録編)
ミキサーの選択ポイントとして最初に考慮すべきは入力チャンネルの数です。
宅録/制作用途なのか、プライベートスタジオや小規模イベントなのか?
この辺りで必要とするch数が変わってきますね。
またミキサーによってはトータルの入力chとマイクに対応したチャンネル数が違う(マイク対応が少ない)場合もままありますので、まずは必要なマイクのch数を確認しましょう。
例えば宅録。同時に必要なマイク数はボーカル+アコースティックギターだとしましょう。ライン入力は電子ドラム、キーボード、エレキギター、ベース、で4つは欲しい。そのうち2系統はステレオ入力が望ましい。こんな感じのプランだったとします。
これだと必要ch数は6(メインVo、アコースティックGt、エレキGt、ベース、電子ドラム、キーボード)。
このうち、エレキGt、ベースはライン入力できる機器があると仮定すると、マイクが必要になるのは2(メインVo、アコースティックGt)、ステレオで入力したいのは2(電子ドラム、キーボード)になります。
ということはch数は最低でも6系統、マイク入力は最低でも2系統、可能なら少し余裕のあるチャンネル構成で….
という感じになりますね。
あくまで1例ですが、こちらはSoundcraft Notepad-12FX。
マイク対応入力のXLR/フォンコンボ端子は4系統。Voマイク、アコースティックギターマイクは、もちろんここを使いましょう。エレキギター、エレキベースは残りの2つのXLR/フォンコンボ端子へ。
Soundcraft Notepad-12FXはXLR/フォンコンボ端子の4つのうち2つがエレキギターやベースを直挿しできるHi-z入力にも対応していますのでアンプシミュレーターやダイレクトボックスがない場合も、”一応”そのまま繋げます。もちろん音質やサウンドのバリエーション的には限界がありますが。
5/6chと7/8chがステレオ構成になっていますので電子ドラムやキーボードはここを使うと良いでしょう。
以上を全て同時接続してもRCA端子のステレオ入力、EXTERNAL/FXのライン入力chは残ります。例えば打ち込みのあるバンドならRCA端子を使って打ち込みの音源をつなげますね。EXTERNAL/FXは突発的に音源が増えた場合や外部エフェクターを使う場合の戻し入力としても使えます。
もちろん、今回の例ではドラムやキーボードをステレオ入力としてカウントしていますが、モノラルであればさらに入力数は増えます。
これだけの入力数とLexicon PRO製エフェクトプロセッサー搭載、27.5cm×21.5cmのコンパクト設計。
Soundcraft Notepad-12FX。侮れません(笑)
ミキサー選択のポイント 必要ch数を確認(小規模ライブ編)
次にライブ環境を考えてみましょう。
結論から言えばライブ環境を考えるならばチャンネル数は多ければ多いほうがいいです。
最低でも16ch、可能なら24chくらいは欲しいところ。
なぜならアコースティックドラムにマイキングをする場合はそれだけでも、キック、スネア、ハイハット、タム×3、オーバーヘッド×2とパッと思いつくだけでも8chは必要です。これにボーカル、コーラス、ギター、ベース、キーボードとなっていくと16chくらいはすぐに埋まってしまいます。
ただ、小規模な環境であればドラムのマイクを簡素化する場合もありますし、スペースの問題もあり、あくまで必要最低限でという考え方もあると思います。
今回はそんな小規模なライブ環境を例に考えてみようと思います。
ボーカルを3系統(メイン+コラース)ドラムを4系統(キック、スネア、オーバーヘッド×2)エレキギター×2、ここまででマイク9系統です。これにベース、キーボード、BGMで3系統だと仮定すると、トータル12ch、そのうちマイク入力が9となります。
こちらの一例は ALLEN&HEATH ZED-16FXです。
マイク対応のXLR端子入力が10系統、11/12、13/14、15/16でステレオ時3系統(6入力)を確保できます。
またAUXのセンドが3系統(PRE2系統)あるのでステージでは必ず必要になるモニタースピーカーへの出力も最低限の自由度は確保できますね。
※AUXについては後ほどもう少し詳しく。
各コントロールも視認性よく色分けしてあり、オペレーター経験の少ない方でもわかりやすい視認性が嬉しいですね。
ということで、まずはミキサー選びのスタート地点となる、必要なチャンネル数から選び方のポイントを挙げてみました。
もちろん、ミキサーのチャンネル数は多いに越したことはなく、必要かなと思う数より少し多めに余裕を持って選ぶことが重要ですが、それでも突発的にもう1チャンネル、2チャンネルと必要になる事態は少なくありません。
そんな時にもステレオをモノラルにしてみたり、FXインプットを緊急的に使ってみたりなどなど、やり方次第でどうにかなってしまうのもミキサーの面白さ。余裕のある機材でしっかりしたオペレーションができることが一番ですが、アイデアでピンチを切り抜けるのもオペレーターの腕の見せ所、かもしれません(笑)。
今更聞けないでしょうから書きます。 AUXってなに?
ミキサーは、一般的に一番上にGAINつまみがあり、その下にイコライザーのつまみが並びます。
だいたいその下に来るのがAUX。さて何に使うか?
答え:いろんなことに使います(笑)
とは言え、最も代表的な使い方はライブの際のモニター出力でしょう。
オペレーターの基本的な仕事はミキサーにまとまった音源を、適度に音質補正し、適正な音量バランスにしてメインスピーカーへ出力します。この客席側で聞く音、俗にいう「外音」です。
それに対して演者さん側へ返す音、これは外音のバランスとは違って、例えばもう少しボーカルを上げたい、とか、ギターをちょっとだけ下げたい、とか演者さんのクセやスタイル、ステージの環境によって外音とは違うバランスにミックスする必要があります。はい、これがいわゆる「中音」です。
各chにあるAUXは、そのAUX SEND。つまり送り出しのレベルを決めるつまみです。
先ほどのALLEN&HEATH ZED-16FXでAUX センドがPRE2系統あることを紹介しました。
PREとはPREフェーダーのこと。プリフェーダーモードで使用する場合、各チャンネルのAUXはAUX SENDノブでAUX 出力から出て行く音量を調整しますが、そのチャンネルのフェーダーの影響は受けません。その名のとおりプリフェーダー(フェーダーの前)です。モニター出力にはこのPREフェーダーを使います。
PREフェーダーとは対極にPOSTはPOSTフェーダー(フェーダーの後)のことです。
こちらは主にリバーブやディレイ、コンプレッサーなどの外部エフェクターを使用するときに使うことが多いです。
エフェクターの出力はミキサーのステレオ入力、もしくはAUXリターンに戻します。
これによって例えばキックとスネアだけにディレイを強くかける、と言ったピンポイントなセッテイングが可能になりますね。
このほかにもメインミックスとは別に出力するためのサブミックスを作ったり、レコーディング時に特定のチャンネルだけをオーディインターフェイスに出力するなど様々な用途(まさにいろんなことですね)に使えます。
AUXを使った出力もまさにオペレーターのアイデアが問われます。
もちろんAUXの系統数が多ければセッティグの自由度は高まります。
ライブ用途であれば少なくとも2系統はほしいところです。
フェーダーでミキサー選び ストロークの長さにもこだわる?
ミキサー操作で最も頻繁に操作する部分、それは各出力レベル(音量)のバランスをとるフェーダーです。
フェーダーは主に2つのタイプがあります。
小型ミキサーに多く採用されるロータリーフェーダー。
つまみを回していくタイプです。
構造上、コンパクトな設計にしやすく、軽く触れただけで動くようなことも少ないので誤操作しにくいです。また外部から埃が侵入しにくい構造ですのでデスクトップに常設するような用途に向いています。
視認性はやや弱点かも?
ミキサーを操作してる!感が出やすいのはこちら、ストロークフェーダー。ストロークの長さも大型機になればなるほど長くなる傾向にあります。長いほうが微調整もしやすいですよね。
どのチャンネルが今どれくらいの出力になってるかを直感的に把握できる視認性の高さ、パッと触れる操作性もストロークフェーダーならではの強み。
ただし、フェーダーの隙間が構造上どうしても空いてしまいますので、長期間使わない場合はカバーをかけるなど保管にも気をつけてください。
ミキサーのグループバス(ミックスバス)って何?
ミキサーにはグループバス(ミックスバス)と呼ばれる機能を搭載したモデルがあります。
特にライブ環境では使いこなせると便利ですので見ていきましょう。
ミックスバスは選択した1つ、もしくは複数の音声信号まとめてコントロールできる機能です。
例えばライブ中にドラムに6本のマイクを立てていたとします。ドラムの各マイクのバランスは取れているけども全体の音量が少し小さい(または大きい)。この場合、同時に6本のフェーダーをコントロールすることは難しいですし、せっかく上手く取れていたバランスを崩すことになりかねません。
こんな時あらかじめドラムに立てたマイク6本をグループバスにアサインしておけば、このグループバスのフェーダーでバランスを保ったまま全体の音量をコントロールできるので非常に便利です。
一つのグループをバスに乗っけて目的地までまとめてGo!こんなイメージでしょうか?(乗り物のバスが語源かどうかはわかりません、間違ってたらごめんなさい)
ドラム以外でもコーラスグループなんかのオペレーションで活躍しそうですね。
ミキサーの機能を使いこなそう! レコーディングから配信まで
パソコンを使ったレコーディングや、ネット配信をプライベート環境でも簡単にできるようになった昨今、ミキサーに求められる機能も多様化しています。
その中でも代表的な機能の一つがオーディオインターフェイスとしての動作で、USB接続によるインターフェイス機能を搭載したモデルも一般的になってきました。
こちらの例はSoundcraft Notepad-5をPCに接続した状態。このシンプルなセッティングでもギター弾き語り+打ち込み音源程度であればすぐに配信可能です。
※接続にはSoundcraftサイトからドライバーのダウンロードとインストールが必要です。
輸入代理店ヒビノ株式会社のサイトに「Notepadを使ったYoutube Liveでのライブ配信」について特設ページがありますので参照してみてください。
YAMAHA AG03 / AG06 は配信(ウェブキャスティング)に特化したミキサーとして定番です。
入力しているマイクの声や楽器の演奏に、コンピューターやiPadでプレイしたBGMや効果音を加えて配信できるループバック機能、ワンタッチでかけれるDSPエフェクトなどシンプルなワンオペ配信での操作性を重視しています。
こちらもヤマハ株式会社のサイトに「AG03使い方ガイド」の特設メージがあります。
定番ミキサーの購入ページはこちら
いかがだったでしょうか?
もちろん、ミキサーは音作りのキモになる機材でもありますが、今回は機能面にフォーカスして紹介していきました。
現行機種の中から定番となっているトップセラーモデルをいくつかピックアップしましたので参考になれば幸いです。
クラスを超える音響性能を実現し多彩な機能で幅広い用途に対応する小型ミキサー
ALLEN&HEATH ZED-16FX ZED16FX/X
コンパクトなボディに、10系統のモノラルチャンネルと3系統のステレオ・チャンネル、そして16種のエフェクトを搭載した機能派ミキサー。
ディスクリートClass-Aマイクプリアンプ「D-PRE」を搭載。妥協なき音質を求めたYAMAHA のスタンダードミキサー MGシリーズの中核モデル。
アンプシミュレーター機能を搭載し、様々な楽器の接続に対応した6チャンネルミキサー。
Onyxプリアンプ、2×4 192kHz USB I/O、新設計のGigFXエフェクトエンジンなどを採用し、新たにV3へ進化した定番ミキサー。
ジングルや効果音を鳴らせる6個のサウンドパッド、電話の音声をミックスできるスマートフォン入力、バッテリー駆動でスタジオの外にも持ち出せる機動力。ポッドキャスト番組の収録やライブ演奏のミキシングが手軽に行える、8チャンネル仕様のライブミキサー&レコーダー
その他の「いまさら聞けないPA レコーディング入門」記事はこちら
「いまさら聞けないPA レコーディング入門 ミキサー編」はいかがだったでしょうか。
chuya-online.comの楽器情報サイトDiscover、「いまさら聞けないPA レコーディング入門」シリーズの他の記事はこちらから。