【音楽で食べていく004】プレイヤー兼チューナーとして唯一無二の存在感で全国を飛び回る有松益男さん(後編)

無法松像と有松益男氏
無法松像と一緒に

BACK DROP BOMBのドラマーとして、そして多くのアーティストを支えるドラマーとして。
さらには同業であるドラマーのチューナーとしてサポート役の地位を確立している有松益男さん。

前編では北九州から上京しバンド活動からチューナーとして生きていくことを決意し、多方面から依頼が殺到するまでに至った経緯などをお話していただきました。

後編では、さらに深く有松さんが日々心がけていることなどを聞いてみました。

前編はこちら

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ドラムは土台

有松益男氏

※取材は7月下旬に行いました。

――チューナーのお仕事は新人バンドの現場とかもあったんですか?

「ありましたよ。でもデビューが決まって音源を作る段階でちゃんと叩けないケースもあります。ドラマーって練習環境を確保するのが難しい楽器じゃないですか。ギターとかと違って。

自分でドラムセットを購入するのも難しいので、家で練習できるメンバーだけがどんどん上手くなっちゃいますよね。あと自己流になりすぎてしまっていたり。

なので、ちゃんと人に習うことをオススメします。効率良く技術を習得することが重要ですよね。今はYouTubeとかもありますので情報収集については良くなりましたけどね。やはりドラムは楽曲の土台なので責任重大なんです」。

――私もバンドマン時代、レコーディング中にドラマーがかわると曲がこうも変わるのか! って実感しました。

「情報『だけ』は色々手に入るけど、PCのスピーカーを通してでしかドラムの音を聴けないので、それはそれでどうなんでしょうねって思います」。

――昨年、九州でドラムクリニックをご一緒したのですが、間近で音を聞くと「これがプロの音か!」と驚きました。ぜひ若いアマチュアドラマーに体験してほしいです。

ドラマーはフィジカルが重要

有松益男氏

――格闘技もされていますが、身体づくりの一環ですか?

「そうですね。体幹がしっかりしていないとビートを刻めないですからね。さらに重心が偏っているとキレイに叩けない。

それでいうとキックボクシングは左右均等に手足を使うので、バランスが良くなります。とにかくブレない軸が大事ですね。

小学校のときに空手をしていて、ロードウォリアーズに入りたかった(笑)。マッドマックスも好き。モヒカンとかああいうのばっかり(笑)。そういうのが好きなんです」。

時代が移りゆくことは自然なこと

――「バンドの動員が減っていくことは自然なこと」と仰っていたのが印象に残ったのですが。

「本来、お客さんの動員を気にしてバンドをやるのは違うと感じていて。もともと不良が誰にも何も言われたくないからロックを好き勝手やっているわけです。

ただ来てくれることはとてもありがたい。でもこちらから頭を下げてまでっていうのはちょっと違う。

お客さんの好きな音楽と、自分たちがカッコいいと思ってやっている音楽が合致しているから続けられるのであって、みんな歳を重ねていくし離れていくのも自然なことです。

『仕事』なら頭を下げることもありますけど、バンドは好きなことをやる場なので。そこはバンドのメンバーみんなに共通していることじゃないかな」。

日々、心がけていること

有松益男氏

――チューナーのお仕事含め、音楽活動をしていく上で信条としていることはありますか?

「『断らない』ことですかね。条件的によっぽど厳しかったら別ですけど。

あと、あまり練習をしない。練習も大事なんですけど、ここ数年は音楽を色々聴くほうが大事だと感じています。ラーメン屋さんに入ってラジオでかかっている曲が気になったらウェブサイトでプレイリストを調べたり」。

結局は人とのつながりが大事

――チューナーというお仕事、海外では認められている職業ですが日本では「型」がない職種でもあったわけですよね。どうやって自分の需要を作っていったのですか?

「完全に人とのつながりですよね。

例えば1人のレコーディングエンジニアさんから『とてもやりやすかったです!』と言われて、じゃあこっちもと別の現場に呼んでもらえて。

すると違うディレクターさんにも会うことになります。そうするとその方が担当している別のバンドもあるので、そっちも来て下さいとどんどん広がっていきました。

ドラマー同士って仲が良いのでよく飲むんですが、自分がチューニングしたことがあるドラマーが多い時もあって、違う人から『僕のもお願いします』となったりね。それで現場に行くと、同じ事務所に所属している他のバンドのドラムチューニングの依頼の話になることもあります。

自分、こんな身なりですが(笑)、そこで誠実に仕事をして、的確な答えを出せるようにしておけば認めてくれるし。だからドラムを叩かない月があってもなんとも思わないですしね。

つい先月なんかは叩く方の仕事が増えて、チューニングしていないと逆に不安になったりしてね(笑)」。

2021年、ミュージシャンが置かれている環境

有松益男氏

――2021年になって自分の音楽環境が良くなったなと感じることはありますか?

「自分はドラムチューナーをやっていて良かったなと感じますね。良い武器(仕事)を持ったんだなって。

コロナ禍になって、どう動くかを考えたときに人にドラムやチューニングを教えに行って喜んでもらえる。特にドラムのチューニングってわからないことが大きいので。ライブができないライブハウスを使わせてもらって、チューニングセミナーをさせていただきましたが、各地のアマチュアドラマーさんと交流できて自分も楽しかった。できることをやるって感じですね」。

――プレイヤーとチューナーどちらもできるのは強みですよね。

「今はやりたいと思うことしかしていないんですよね。もちろん、若いときにBACK DROP BOMBをはじめたときは挑戦していたこともあります。

ここ数年でいうと、シシド・カフカさんの“el tempo(エル・テンポ)”がはじまったのも大きいですね。打楽器奏者たちがハンドサインで即興演奏していく、曲が無いっていう新鮮なユニットです。ドキドキ感があって楽しいです。自分がどう反応できるかっていう」。

逆境をチャンスに変える 重要なのは楽器よりも音楽

有松益男氏

――難しい現場で気に入られたエピソードがありましたが、成功へもっていく秘訣みたいなものはありますか?

「う〜ん、チューナーにも色々いましてね。

先輩もいるんですけど、それぞれ手法が違うんですよね。ただ、みんなドラム愛が強いんですよ。各メーカーの音はこうだ、とか。

そうではなくて、いかに音楽・楽曲製作に対して100%の技術を注ぎ込めるかが大事で、楽器の歴史とかは関係ないんですよね。そこにある楽器の特徴を知っていることは大事ですけど。

さっき音楽を沢山聴くっていったのはそういうことで、目の前にある楽曲に最適なサウンドを作ることが仕事なので。それに合うドラムサウンドはこんなんかな? っていう。音質の良し悪しではなく、楽曲に合うサウンドを知っていることが重要です。最高のサウンドが最適とは限らないってことですよね。

だから、あまり囚われすぎずできると良いですよね。そしてエレドラでなんでもできる時代にもなってきていますからそこと闘っていかないとですね」。

ワクワクがより大事な時代に

「昔、BLANKEY JET CITYのライブを観に行って『幸せの鐘が鳴り響き僕はただ悲しいふりをする』って曲を演奏しはじめたときに『音源に入ってたホーンセクションはどうするんだろう』って思っていたら、ベンジー(浅井健一氏)がギターでそこを弾き始めた。でも音源と変わらない熱量で聴けるんですよ。それがライブじゃないですか。「やったー!」と思って。

今はそれが減りましたよね。曲は完璧に再現する美学というか、そういうケースが増えたと思います。でも、それも良いと思います。オジサンになっちゃったのかな(笑)。

弦が切れたりとか、ワクワクとか、何が起こるかわからないとなると毎回観に行きたいわけで」。

伊藤辰太郎と有松益男氏

さいごに 〜スティックの選び方

――最後にアマチュアのドラマーに向けてスティックの選び方をお聞きしたいのですが。

ドラムスティックの太さ・長さ・重心がどこにあるか、ですね。あとはプレイスタイルによります。振ってみてどうかっていう。重心が前にあると細くても慣性が効くので疲れてきますし。

あとは材質ですね。オークだと硬い音。ヒッコリーメイプルもあります。メイプルは柔らかいのでリムショット厳禁ですけどね。

スティックで音が変わるので、曲によって変えるために、色々と持っていても良いかもですね」。

――有松さん、ありがとうございました!!!

LERNIから有松益男シグネイチャースティックが発売中

取材後も活躍が続く有松益男さん

本取材後もますます活躍を続ける有松益男さん

Drum Magazine Webでは「新生SAKAEのジャパン・カスタム・スネアをW有松が検証!」の記事にて、ARIMATSUとMASUOの“W有松”によるSAKAE Drumのレビュー記事上がっています。

Drum Magazine Webの記事はこちらから

さらに!

感動の中、先日幕を閉じた、「東京2020パラリンピック競技大会」の閉会式に シシド・カフカさん率いる el tempo(エルテンポ)が登場!

※NHK公式サイトによる動画。2分53秒あたりから
https://sports.nhk.or.jp/paralympic/highlights/content/b1d00b37-20d5-4db9-998a-2e3960564daa/

もちろん、有松益男さんもメンバーとして参加されていました。

el tempo(エルテンポ)の出演をお伝えするニュースはこちらから

シシド・カフカさんのインスタグラムには演奏前(演奏後?)のel tempo(エルテンポ)の皆様の様子が上がってました!

お身体に気をつけて今後もますますのご活躍を!

「DRUMMERS TOP TEAM」のアイテム、チューヤオンラインでも買えます!

有松さんともうひとり、村上正人さん(Assfort、Hellbent、R、恒正彦)で結成された「DRUMMERS TOP TEAM」を知っていますか?

現場でのドラムチューニングはもちろん、後進の育成からドラマーの可能性を広げるアイテムの開発・販売を行うプロジェクトチームです。チューヤオンラインでも「DRUMMERS TOP TEAM」のアイテムを購入することができます!

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(編集&撮影 赤坂太一